離婚の種類と手続き
1.協議離婚世の中の離婚の多くは協議離婚です。夫(妻)が離婚に応じようとしない場合でも,話し合いの余地があるうちは,協議離婚を模索すべきであるといえます。 時には,双方の親,共通の知人といった第三者を交えて話し合うことも効果的です。 協議離婚をする場合,未成年の子どもがいるときは,その親権者を決めなればなりません。 |
これらの取り決めは,「離婚協議書」などと題する書面を交わして行うことが多いのですが,適正で公平な内容にはなっていないケースをよく目にします。
安易な協議離婚は,後になって自分を苦しめる結果となるおそれがあります。
したがって,たとえ協議離婚ができそうな場合でも,弁護士に代理人として交渉を委任した方が良いこともありますし,弁護士の助言を得ながら自ら離婚協議を進めていくことも考えられます。
2.離婚調停の申立て
他方,話し合いをしても夫(妻)が離婚に応じようとしない,あるいは当事者間では話し合いができない状態にあるといった場合は,家庭裁判所に調停を申し立てることになります。
調停の申立ては,必ずしも弁護士に依頼しなくても可能です。自分で臨む場合は,離婚調停申立書を作成しなければなりませんが,その書式は,以下の裁判所のウェブサイトからダウンロードすることができます。
http://www.courts.go.jp/saiban/syurui_kazi/kazi_07_01/index.html
申立てにあたっては,添付書類(戸籍謄本)のほか,収入印紙と郵券を準備する必要があります。詳しくは,上記のウェブサイトにも書かれていますし,各家庭裁判所に電話で問い合わせてもよいでしょう。
もちろん弁護士に調停申立てを委任すれば,申立ては弁護士が代理人として行います。
なお,離婚調停の申立ては,原則として,相手方の住所地の家庭裁判所に行う必要があります。そのため,別居して遠く離れた地で暮らすようになっている場合は,遠方の家庭裁判所に申し立てなければなりません。
裁判所の管轄区域については,つぎの裁判所のウェブサイトなどで確認することができます。
http://www.courts.go.jp/saiban/kankatu/index.html
申立てから1か月余りで,第1回調停期日は,原則として,相手方の住所地の家庭裁判所に行う必要があります。
3.離婚調停期日の進み方
弁護士に委任した場合は,調停期日にはその弁護士とともに調停に臨むことになります。家事調停では,弁護士に委任したからといって本人は出席しなくてよいということにはなりません。
他方,弁護士に委任せずに調停を申し立てた場合は,もちろん,調停期日には自分だけで臨むことになります。
「調停事件が初めて」という方は不安でいっぱいでしょうが,実際には,それほど大変ではありません。調停期日でのやりとりは,調停室という小部屋で行われますが,夫と妻が一緒に調停室に入るということは原則としてなく,交互に調停室に入って,調停委員と言葉を交わします。
申立人と相手方の待合室は別室となっていますので,言葉を交わなさいどころか,顔を合わせることすらないまま,その日の調停が終わるというのが,むしろ通常です(DV絡みの事件などでは,このあたりは裁判所側がもっと慎重な配慮をします)。
一回の期日は,交互に幾度か調停室に入って話をして,合計2時間ほどで終了することが多いです(約半分が待ち時間となります。本でも持って行った方がよいかもしれませんね)。調停が次回に続く場合は,期日が終了する際に次回の調停期日を決めます。たいていは1~2か月先に指定されます。調停委員は男女1名ずつ2名で,双方の話を辛抱強く聞いて,解決に向けて妥協点を探ります。
当事者同士の話し合いでは全く埒があかなかったのに,調停を重ねることによって折り合いが付き,離婚が成立するということは珍しくありません。
4.調停の成立
離婚自体,あるいは離婚条件などで合意に達し,調停が成立する場合には,原則として双方とも調停室に入ります。
担当裁判官と書記官も現れて,離婚の条件などを改めて確認します。
この離婚の条件などは「調停条項」という形で文章化されます。調停条項が定められた書面を「調停調書」と言いますが,これは確定判決などと同じ効力があり,例えば,相手方が調停条項に従わないと強制執行をすることができます。
なお,離婚調停が成立したからといって,戸籍上も当然に離婚となるわけではなく,離婚届を作成し(相手方の署名押印は不要です),これに調停調書謄本という書類を添えて役場に提出する必要があります。
5.調停でピンチとなったとき
ただ,調停委員はどちらか一方だけの味方というわけではありませんし,うまく説明できないと自分の思いや考えを調停委員に十分に汲み取ってもらえないこともありえます。特に相手方には弁護士が付いている場合は,相手方は言い分を十分にアピールできているかもしれず,その不安はいっそう強まります。
相手方と対等な立場で調停ができていない,自分の思いなどが調停委員に伝わっていないといった不安が出てきた場合は,やはり弁護士の力を借りることが考えるべきです。
弁護士に代理人として委任することも考えられますし,弁護士の助言を得るだけでも状況を打開できることがあります。
6.離婚訴訟
調停は,あくまでも双方が合意しなければ成立しません。したがって,調停を続けても合意に至る可能性がないと判断されれば,調停は不成立として打ち切られることになります。2回目で不成立になることもあれば,半年,1年と経過した後に不成立となることもあります。
離婚したいという思いに変わりがないのであれば,つぎは,離婚訴訟を家庭裁判所に提起することになります(なお,「調停前置主義」といって,原則として,調停を経てからでないと離婚訴訟は提起できません)。「訴状」という書類を家庭裁判所に提出する必要があります。
この離婚訴訟も,調停と同様,必ずしも弁護士に委任する必要はなく,自ら行うこともできます。 離婚訴訟のゴールは判決ですが,判決で離婚が認められるためには,法律(民法770条1項1~5号)で定められた離婚事由が必要です。
離婚事由は,
①不貞行為,
②悪意の遺棄,
③3年以上の生死不明,
④強度の精神病,
⑤その他婚姻を継続しがたい重大な事由,
とされています。⑤の典型例は暴力です。
相手方が離婚事由がないとして争う場合は,離婚訴訟を提起した側(原告)が,離婚事由があることを具体的に主張し立証しなければなりません。これが不十分であれば,判決となったときは,請求棄却となり離婚が認められません。
ただ,離婚訴訟にまで進展した場合でも,和解が成立するなどして,判決に至らずに離婚が成立するケースも多くあります。
すでにお話ししたように,離婚訴訟は弁護士に委任しなくても可能ですが,訴訟特有の難しさもあって,事案によっては弁護士に助力を求めるのが賢明です。
実際,調停までは自分でやったが訴訟は弁護士に依頼したという方は多いです。
7.離婚事件への弁護士の関わり方について
家事事件では,必ずしも弁護士に依頼する必要はありません。また,依頼したからといって弁護士に任せきりにできるものでもありません。
しかし,ここまでお話ししたように,時と場合によっては,やはり専門家である弁護士の力を借りるのが得策です。
「力の借り方」も多様で,代理人として依頼するほかにも,局面ごとに相談する,あるいは継続的にアドバイスを受けるといった方法も考えられます。姉小路法律事務所では,もちろん代理人として受任させていただくこともありますが,「良き相談相手」として,代理人としてではない形のサポートにも取り組んでいます。
解決事例
よくある相談例
■離婚したいのですが,夫(妻)は離婚に応じようとしません。どのような手続を取れば離婚できますか?→ 2,6
■離婚調停はどのように進められるのですか?→ 2,3
■これから離婚の手続を進めていきたいと考えているのですが,離婚協議や調停のどの段階で弁護士に委任するのが得策でしょうか? → 1,5,7