婚姻費用について私立学校の学費が特別費用として加算された結果、有利な条件で離婚ができた事例【離婚解決事例59】
50代の夫婦。妻が相談者・依頼者。
夫の女性関係が疑われるなかで夫が自宅を出て離婚を求めて別居し、調停を申し立ててきた。
調停では夫は代理人の弁護士を付けたが、相談者はひとりで臨み、婚姻費用の調停を申し立てた。
婚姻費用はいわゆる算定表によれば月額16~18万円の枠になるが、長女は私立大学に進学していてその学費も必要となることから、相談者は月額20万円とすることを求めた。
夫が月額20万円の支払を拒んだことから、月額18万円とする調停に代わる審判が出た。
他方、離婚については相談者が離婚自体に納得できないうえに示された離婚条件も通常の財産分与の水準にとどまるものであったことから、結局不成立となり、夫が離婚訴訟を提起すると宣言していた。
この時点で当事務所に相談され、受任することになった。
婚姻費用については私立大学の学費を特別費用として加算すべきであることから、調停に代わる審判に異議を申し立てて、通常の審判手続へと移行させ、特別費用の加算を具体的に主張し、審問も開かれた。
その結果、担当裁判官が月額約26万円が相当であると考え、夫を説得した結果、この金額の婚姻費用とすることで解決をみた(手続としては、調停に付したうえで調停成立となった)。
離婚訴訟については、婚姻関係は未だ破綻していない、仮に破綻しているとしても、夫の不貞行為ないしそれに準じる行為がその原因であるため離婚請求が信義則に反するとの主張・立証を展開した。
その後、夫から、調停段階よりも依頼者にとって格段に有利な離婚条件(実質的には数百万円の上乗せとなる)を提示したことから、訴訟上の和解によって離婚することになった。
コメント
婚姻費用が鍵を握ることになった事件でした。
養育費や婚姻費用の金額は「算定表」という簡易な算定方法によって算出されるのが原則ですが、事案によってはこれに修正を加えることになります。
このケースでは、調停での対立がわずかであったことから、裁判官が「調停に代わる審判」というものを出して、算定表から導かれる金額による中間的な解決を提示しました。
調停に代わる審判は、2週間以内にどちらかが異議を申し立てれば、失効して調停が不成立となって正式な審判手続に進みます。
本件では、私立学校の学費を加算すべきであることから、異議を出して、正式な審判を仰ぐことにしました。
ここでも、夫は私立学校の進学を容認していない、長女がアルバイト収入を得ているなどの主張をして抵抗してきましたが、裁判官がこちらの主張を容認する意向を示したことから、夫は観念して、調停に代わる審判よりも月額8万円ほど高額の婚姻費用の支払を受けることで解決をみました。
離婚訴訟では、上記のように、夫が有責配偶者であるとの主張を展開しましたが、これを証明する証拠は万全のものではなく、判決になると有責性が否定されるリスクがありました。
そのため、依頼者としては、調停段階よりも有利な離婚条件が引き出せるのであれば、離婚する方向で考えることになりました。
ここで婚姻費用が活きてきました。
夫の収入からすると月額26万円の婚姻費用はかなりの負担で、訴訟が続くことでこれがボディーブローのように効いてきました。
夫としては、もしも離婚が認められないようなことになると婚姻費用の負担が長年月にわたることから、判決で敗訴するリスクを冒すことはできないため、和解による解決に向けて条件を引き上げていく必要がありました。
期日間にも代理人間で交渉を重ね、依頼者としても納得することができる条件となったことから、和解離婚の成立に至りました。
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