離婚と交通事故の共通点? 距離感の大切さ 2019/03/13

 

 

コラム20190313

島耕作シリーズで有名な漫画家の弘兼憲史さんがある著書のなかで,”夫婦も,自動車も,距離が近すぎると危険である”という趣旨のことを述べておられました。

 

何とも上手い表現です。

 

たしかに,この車間ならぬ夫婦間の距離を誤った結果,婚姻関係が損傷してしまって,離婚の相談にお見えになるケースもあります。

特に,婚姻期間が数十年にも及ぶ夫婦で,しかも妻側のご相談が多いです。

 

許容できる物理的な距離感にも個人差があり,それが男性と女性とで違うといったことも指摘されています。

同じように夫婦の間にも距離があります。

物理的な距離もあれば,精神的な距離もあります。

どんなに好き好んで結婚したとしても,元々は赤の他人で生まれも育ちも違う,別の人格を持った者同士ですので,ふたりのあいだに多少なりとも距離・距離感が生まれるのは当然のことと言えます。

それが「ほどよい」ものであればよいだけのことです。

 

問題なのは,その距離・距離感に夫婦の間で齟齬がある場合です。

 

婚姻生活を続けるなかで,絶妙な距離を保っている夫婦も珍しくありません。

また,往々にして女性側の方が距離を広めにとっておきたいという傾向があるように思われます。

しかし,そうとは知らずに,夫が自分だけの考えで夫婦の距離を一気に縮めようとする行動に出ることがあります。

わかりやすいのは,定年後に妻と共通の趣味を持ったり,一緒に旅行したりしようとするケースです。

夫が定年した後も妻はこれまでと同様に友達と旅行に行くことを望んでいると先の弘兼さんの著書にもありました。

 

これまで広めだった距離を一気に縮めようとすると,その縮め方を誤ると,不協和音を生むことがあります。

夫婦の距離が縮まり,接触機会が増えたことで,相手への不満を抱きやすくなり,それが蓄積されて関係が悪化するケースもあります。

しかし,距離を縮めようとした方は,この関係悪化に気づいていないことも少なくありません。

 

今後,自動車はAIの進化によって適度な車間距離が保たれますが,夫婦間の距離を適度に保つことはおそらく当面は自動化できないはず。

夫婦間の距離・距離感という意識を持つだけでも,少なからず,夫婦関係は良い方向に変わったり安定したりすると思います。

                                            

                                               弁護士 大川 浩介

 

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