ケビン・コスナーの離婚裁判より~高額な養育費の支払いと自宅退去の引き換え条件!?~ 2023/07/10
ケビン・コスナーと妻との離婚裁判のなかで、妻が夫(ケビン)に対し、自宅退去に応じる条件として、3人の子の養育費として日本円に換算して毎月約3600万円の支払いを求めているという報道がありました。
報道された情報によれば、妻側が離婚を求めているようです。また、ケビンが退去するよう求めている自宅は、ケビンが婚姻前から有していたものということです。
もちろん舞台はアメリカの裁判所ですが、これが日本の離婚裁判であった場合を考えてみます。
まず、離婚を求める妻に対し、夫が自宅からの退去を求めた場合、それは認められるでしょうか。
ケビンの裁判では、自宅からの退去について合意した婚前契約の有効性が争点となっている模様ですが、そのような契約はないものとします。
自宅不動産が婚姻前から夫の有していたものだとすれば、夫の特有財産であり、それ自体は離婚に伴う財産分与の対象にはなりません。
したがって、妻には、離婚した場合に自宅を取得する権利はありません。
しかしながら、夫婦には同居・協力・扶助義務があるため、離婚が認められるまでは、従前夫婦が生活の拠点としていた自宅に引き続き居住することも通常は許されます。
もっとも、ケビンの離婚裁判で特殊なのは、自宅に居住している妻側から離婚を求めている点です。
妻が離婚を拒み自宅からの退去も拒否する事例はよく見かけますが、妻が離婚を求めながら、一方で、夫の特有財産である自宅から退去することを拒否するケースは珍しいといえます。
このような場合に、夫が自身の特有財産である自宅からの退去を求めることができるか否かについて、先例となるような裁判例は見当たりませんが、妻自身も離婚を望んでおり、客観的にみて既に夫婦関係が破綻している状況であるならば、妻が夫の特有財産である自宅に居住し続ける正当な理由はないのではないかと思われます。
次に、毎月約3600万円の養育費の支払いを求めている点はどうでしょうか。
ケビンほどの高額所得者(もちろん実際の収入がいくらかは分かりませんが)になると、養育費の金額も収入に応じて高額になるのではないかと思われるかもしれません。
しかし、日本の離婚裁判実務では、子どもの生活費や監護費用は、義務者が高額所得者であるからといって無制限に増加することはないため、裁判所の作成する養育費の算定表の上限額を上限に決定し、それを超える養育費が必要となる特別な事情があれば例外的に考慮するという考え方がとられています。
つまり、養育費の義務者が高所得者であったとしても、原則として養育費の算定表の上限額程度しか支払いを求めることはできないということになります。
ケビンの場合は3人の子どもがおり、妻は無収入のようですが、ケビンがどれほど高額な所得を得ていたとしても、算定表に基づく養育費が月額50万円を超えることはありません。
なお、ケビンの離婚裁判では、妻は自身の美容整形代なども含めて養育費として月額約3600万円を求めているようですが、離婚成立後に夫が妻の美容整形代を負担する義務はないため、日本の裁判でこのような養育費の増額理由が認められる可能性はまずないといえるでしょう。
ここまで、日本だったらと仮定して検討してきましたが、ケビンの離婚裁判の舞台は日本ではなくアメリカです。
日本の裁判所では考えられないような判断がなされる可能性もないとは言いきれないため、今後の動向に注目したいと思います。
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