債務者口座の照会制度は養育費の不払対策の切り札となるか? 2016/9/27
コラム 82 債務者口座の照会制度は養育費の不払対策の切り札となるか? 2016/9/27
このコラムでも,養育費の不払いの対策として,裁判所が支払義務者の預金口座などを金融機関に照会できる民事執行法の改正の動きをご照会しました。
コラム 79 養育費の不払い,許すまじ-民事執行法改正- 2016/9/16
たしかに調停や公正証書で養育費の取り決めをして不払いとなれば強制執行できる態勢になっているものの,強制執行できる財産が見えないため,強制執行を断念せざるを得ないケースは少なくありません。
今回の改正はその打開策のひとつであると言えます。
もっとも,金融機関側はこの照会が殺到して事務負担が増大することを懸念していて,手数料を徴収することも検討しているそうです。
この手数料の設定いかんによっては,この制度も形骸化しかねないところではあります。
また,支払義務者が親族や知人などの協力を得て,その第三者名義で預金している場合は手出しできません。
もちろん,タンス預金を明らかにする術もありません。
裏を返せば,この金融機関への照会で預金口座が浮き彫りになるような人は,ある意味,自分の財産を操作しづらい人ということになり,そういう人は元々養育費を任意に支払わざるを得ない人であるとも言えます。
最も養育費の支払を受けづらいのは,自営業をしていてその財産も収入も不透明な人を相手にする場合です。 このような人には,今回の法改正は必ずしも有効ではないのかもしれません。 かといって,外国の制度のように養育費を払わなかったら刑事罰を科されるようなことは日本では考えにくいです。
そう考えていくと,やはり養育費を支払うべき人が子どもとの交流を続ける途を確保することこそが,より確かな方策であるとも言えます。
面会交流と養育費は別の問題であるとは言え,お子さんとの交流を続けながら,養育費を任意に支払わないという人は決して多くありません。
もちろん様々な事情から面会交流をさせることができないこともありますが,そうでないかぎり,養育費の支払義務者と子どもとの交流を継続させる仕組みづくりが養育費の支払確保のためにはポイントになってくるように思います。
弁護士 大川 浩介
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