代理出産・精子提供,子どもは誰の子?-民法の特例法案検討中- 2016/3/25

 

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自民党の厚生労働合同部会で第三者の卵子や精子の提供により子どもが誕生した場合の親子関係を明確にする民法特例法案が了承されたとの新聞記事がありました。

現行の民法では,実子については「妻が婚姻中に懐胎した子は,夫の子と推定する」という規定はありますが,母と子についての実子関係を規定する条文はありません。これは,現行の民法が定められた明治時代には,実際に子どもを出産した母親と子どもの親子関係に疑問を差し挟む余地はなく,わざわざ法律で規定する必要はなかったためです。

しかし,現在では,他人から卵子の提供を受けて出産をするなど,現行民法が想定していなかったケースがあり,このような場合の親子関係をどうのようにすべきであるのか問題となっています。

このようなケースの親子関係について最高裁判所は2007年3月23日に「自分の卵子を提供した場合でも,今の民法では母子関係の成立は認められない」との判断を示しました。病気で子宮を摘出した日本人女性が,自分の卵子と夫の精子を受精させた受精卵を,第三者の女性(米国ネバタ州在住)に出産を依頼し子どもが誕生しました(代理出産)。誕生した子について同州は日本人夫婦の子とする出生証明書を発行し,夫婦は帰国後にこれを役所に提出しましたが不受理となりました。その不受理処分の取り消しを求めて裁判となったものです。当事者が有名人(タレント)であったので憶えておられる方も多いと思います。

今回の民法の特例法案では,第三者から卵子提供を受け出産した場合,出産した女性を母親とすることになってます。精子提供については,夫の同意を得て第三者の精子を用いて妊娠した場合,夫は子が嫡出であることを否認できないとされています。

この法案でも,上記の代理出産の場合,卵子を提供し遺伝的につながりがある母親と子の間でも親子関係は認めてはいません。もっとも,上記最高裁の決定においても「遺伝的なつながりのある子を持ちたいとする真摯な希望や,他の女性に出産を依頼することについての社会一般の倫理的感情を踏まえ,医療法制,親子法制の両面にわたる検討が必要。立法による速やかな対応が強く望まれる」と述べられており,「代理出産」の場合の親子関係については「検討課題」として法案の附則に盛り込み,2年を目途に検討していくとされています。

弁護士 辻 祥 子

 

 

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