証拠の確保という”闘い” 2019/05/10
映画「アクアマン」(2019年2月公開)で強く美しい海底の王女役を演じたアンバー・ハードさん。
実生活では,映画「ラム・ダイアリー」での共演を機に,俳優のジョニーデップ氏と交際を開始し,2015年に結婚しました。
まるで映画のストーリーのような麗しい夫妻の誕生に,当時の映画ファンは沸き立ちました。
ところが,2017年,2人の結婚生活に突如として終止符が打たれます。
2人の離婚原因として,アンバーさんは,家庭内でのジョニー氏による激しい暴力があったことを主張しました。
離婚を考えておられる相談者の方とお話をしていると,度々,「DV(正式名称ドメスティック・バイオレンス 英: domestic violence)」という言葉を耳にします。
日本国内では,配偶者暴力相談支援センターにおける相談件数が,「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」(「配偶者暴力防止法」)改正施行直後の2005年度には52,145件であったものが,2017年度には,106,110件にまで増加しています。
また,警察における配偶者からの暴力事案等の相談件数も,2005年度の16,888件から2017年度は,72,455件にまで増加しています。
(「内閣府男女共同参画局」“配偶者からの暴力に関するデータ”)
夫婦の一方から離婚原因として相手によるDVが主張されることは多いのですが,DVは家庭内という閉鎖的な空間で起きるため,外からは見えません。
そのため,DVの事実を第三者である調停委員や裁判官に対して主張するためには,DVがあったことを主張する側が,客観的な証拠を提出する必要があります。
客観的な証拠として,とくに重要なものが下記の3つです。
第1に,相手に殴られたり蹴られたり,物を投げ付けられたことによってケガをした箇所についての写真です。
第2に,暴力を受けて病院を受診した際の診断書です。
ケガの程度の大小にかかわらず,すぐに病院に行き,そのケガが暴力によって生じたものであることを時間的にも明らかにすることが重要です。
第3に,相手が暴言を吐いたり暴力をふるっている際の録音・録画です。
録音・録画は,恣意的に編集されたものでないことを明らかにするために,長時間途切れなく記録されていることが肝要です。
録音・録画が存在することによって,言った言わない,暴力があった無かったという水掛け論を防ぐことができます。
これら3つに加えて,いつ,どこで,どのような暴力を受け,どのような被害を被ったか,その際の心境などをメモに残しておくことも重要です。
当時の状況を記録して残しておくことで,客観的な証拠を示しながら具体的に説明する際の助けとなります。
先の事例でも,アンバーさんは,顔にアザができた写真やジョニー氏が暴れる動画(※)を公表するなどしてDVがあった事実を主張しました。
(※ジョニー氏の暴行の事実は認定されず,DVの存否は不明なまま,離婚を巡る紛争については示談が成立しました。)
以上のように,客観的な証拠を豊富に確保しておくことが,DVを離婚原因として主張するために最も重要です。
ただ,録音・録画については,隠し撮りをしていることが相手に発覚してしまうと,逆上した相手からさらなる暴行を受けるおそれがあります。
恐怖や苦痛に耐えながら,細心の注意を払いつつ,証拠を確保する作業は,まさに“闘い”です。
客観的な証拠を確保することは重要ですが,無事に離婚できたとしても,大ケガを負わされ将来も苦しむようなことになれば,幸せな再出発とはいえません。
どのような証拠をどのように収集するか(または,早急に保護命令を申し立てるべきか)についてはケースバイケースです。
劇中でアンバーさんが演じた王女メラのように,ひとりでタフに闘うことはおすすめしません。
親族や友人,そして,専門家である弁護士のアドバイスを得て慎重に“闘い”に臨みましょう。
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