「家庭内別居」ってなんでしょう…?2016/12/16


コラム105

離婚相談に来られた方の口から「家庭内別居」という言葉を聞くことがたびたびあります。よくあるのが,配偶者から不貞の慰謝料請求をされた方が「もう何年も前から『家庭内別居』の状態で,(今回の異性関係は)夫婦関係破綻後の関係なので不貞にならないのではないでしょうか?」というパターンや,性格の不一致で離婚をしたい方が「別居期間が長いと離婚できるんですよね?夫とはもう何年も前から『家庭内別居』の状態なのですが…。」というパターンです。

しかし,裁判所が同居している夫婦について「夫婦関係が破綻」していると認定するのはごく限られた場合です。同居してはいるが双方の夫婦としての協力関係がほぼ見られない,単に一緒の建物内にいるにすぎないと言えるような場合です。具体的には,同じ家の中でも各々(あるいは一方)が個室で生活をし,身の周りのこと(食事,洗濯,掃除など)は各自が別々に行っている,もちろん家計も限りなく別々に近い状態となっているといった程度でないと同居夫婦について「夫婦関係が破綻している」とは認められないのです。(夫婦の双方が破談を認めている場合は別として。)

「家庭内別居状態だから不貞にはならない」とおっしゃる方に具体的に家庭内の様子を聞いてみると
「妻とはほとんど口をきかないし,休日に一緒に出かけることもないし…。家には眠りに帰るだけという感じでこの数年間は完全な『家庭内別居』でした。」
「食事?朝は食べない。夜は妻が作ってるのを一人で食べてますが。」
「洗濯?洗濯機に放り込んでます。」(妻がしている)
「給料?給料が入ってくる口座の通帳は妻が持っています。僕の小遣い少ないんです。」
といった答えが返ってくることも少なくありません。

このような状態ですと,ご本人がいくら「家庭内別居」だと主張したところで同居夫婦に裁判所が夫婦関係の破綻を認めることは難しいと考えます。

同居している夫婦に夫婦関係の破綻が認められるのは狭き門なのです。

弁護士  辻 祥子

 

バックナンバーはこちら>>

 

The following two tabs change content below.
姉小路法律事務所

姉小路法律事務所

姉小路法律事務所は,離婚,慰謝料,相続・遺言などの家族関係・親族関係の紛争(家事事件)に力を入れている京都の法律事務所です。なかでも離婚・慰謝料事件は,年間300件以上の相談をお受けしており,弁護士代理人として常時数十件の案件を取り扱っております。弁護士に相談するのはハードルが高いとお考えの方も多いかもしれませんが、まずはお気軽にお問い合わせ下さい。男性弁護士・女性弁護士の指名もお伺いできますのでお申し付けください。 |弁護士紹介はこちら
姉小路法律事務所

最新記事 by 姉小路法律事務所 (全て見る)