産休・育休中の場合の婚姻費用・養育費の計算 2023/05/08

 

 

コラム224

 

先月のコラムで、無収入の場合の婚姻費用・養育費を取り上げましたが、ときに、産休(産前産後休業)中や育休(育児休業)中の収入も問題になります。

 

最近は、女性のみならず男性も育休を取得するケースが増えているため、今後さらに問題となる場面が生じるのではないかと思います。

産休中や育休中に会社から給与が支給される場合には、その給与金額に基づき収入を計算します。

 

また、産休中や育休中に給与が支給されない場合であっても、出産手当金や育児休業給付金の支給を受けている場合は、これらの手当や給付金に基づき収入を計算します。

 

注意いただきたいのは、休業期間中の収入の計算方法が一般的な給与収入に基づく計算とは少し異なるという点です。

 

婚姻費用や養育費の標準計算式は、就労することに伴い、通常、被服費や交通費、通信費、書籍費などの諸費用(「職業費」といいます。)が必要となることを考慮して、実収入から職業費などを控除し、婚姻費用や養育費に宛てられるべき収入(「基礎収入」といいます。)を割り出しています。

 

しかし、産休中や育休中は、実際には就労していないため、職業費は生じません。

 

そのため、産休中や育休中の収入を、一般的な給与収入と同じように計算すると、職業費を負担していないにもかかわらず、職業費の負担する前提で養育費や婚姻費用が計算されてしまうという不合理な結果を招きます。

 

そこで、産休中や育休中の収入を前提に養育費や婚姻費用を計算する場合、実際に負担していない職業費を加算した額を収入とみなす必要があります。

 

この点、宇都宮地方裁判所令和2年11月30日判タ1497号251頁は、育児休業給付金について、職業費を控除する必要がないことを理由に、職業費を15%程度とし、給付金額を0.85で除した額を収入額と認定しており、参考になります。

 

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                                                 弁護士 山崎 悠

 

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