離婚調停のイメージが持てない① 調停成立 2022/03/07
「離婚調停のイメージが全く持てない。」
相談者や依頼者の方からよく聞く言葉です。
離婚調停など初めてのことでしょうし,似て非なる経験をすることもまずないでしょう。
そこで,これから何度かに分けて,離婚調停について抱かれるであろう疑問や質問についてお答えします。
まずは,一気に時計の針を進めて,離婚調停が成立する時から。
離婚調停が成立する瞬間に「法的には」離婚が成立することになります。
この調停成立の局面について,よく尋ねられるのが,
「調停が成立する時に何か持って行く物はありますか。」
「調停が成立する時に何かの書類にサインをするのですか。」
というものです。
結論を申し上げますと,何も必要な物はなく,書類にサインしたり押印したりすることも全くありません。
ふだんの調停は男女1名ずつの調停委員が仕切りますが,調停が成立する時は裁判官と担当書記官も登場します。
それまで調停が開かれていた部屋で,原則として当事者双方も同席して,裁判官が調停の内容を読み上げます。
これを読み上げて双方に異論がないことを確認した時点で,調停離婚が成立します。
そのため,調停成立という手続きはあっという間に終わります。
時には調停期日を何度も開いて大変な思いをして調停成立まで漕ぎ着けることもありますが,成立する時は拍子抜けするくらいあっけなく終わります。
そのため,当事者の方は,調停が成立した,離婚が成立したという実感を全く味わうことができないことが多いです。
帰路,あるいは帰宅後(あるいは数日後)にじわじわと「終わった」ことを感じ始めるといった調子です。
人生において大きな節目となる瞬間ではありますが,このように離婚調停の成立には儀式らしい要素が何もないためか,この節目を実感できないままに調停を終えることになります。
なお,さきほども申し上げたように「法的には」これで離婚が成立しますが,「戸籍上は」まだ離婚したことにはなっていません。
戸籍上も離婚が記録されるためには,どちらかが役所に届出をする必要があります。
裁判所から役所に連絡が入って,戸籍を書き換えてくれるわけではありません。
調停離婚が成立すると調停調書というものを裁判所で作られるのですが,届出用の省略謄本という調停調書を添えれば,一方のみが記入・署名した離婚届で届出が受理されます。
ちなみに,離婚成立から10日間は,原則として,調停を申し立てた側(申立人)のみが,この届出をすることができます。
ただ,相手方の方が,戸籍から抜ける側であって新たな戸籍を作ったり,婚姻時の氏を使い続けたりする場合,そちらが届出をする方が好都合です。
つまり,申立人が夫で,相手方が妻である場合は,妻である相手方が届け出る方が都合がよいことが多いです。
このような場合は,調停調書のなかで,「申立人と相手方は,本日,相手方の申出により,調停離婚する。」と定める必要がありますので,ご注意ください。
この「相手方の申出により」という言葉があることによって,調停成立後10日以内のあいだも相手方が離婚の届出をすることが可能になるのです。
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