『鎹のきもち』 2019/05/31
子は鎹(かすがい)ということわざがあります。
子どもが夫婦の縁を保ってくれるということのたとえです。
ところで,鎹とはどのようなものかご存じでしょうか。
材木と材木とを接続し固定するための両端の曲がった大きな釘で,建築時に用いられます。
自分が持ちこたえなければ夫婦という“家”が倒壊していしまう,そんな重大な任務を子に負わせる,このことわざ。
…真正面から受け入れることに抵抗を感じるのは私だけでしょうか。
さて,少し以前の統計になりますが,未成年者を持つ夫婦の離婚は離婚総数の約60%を占めます(※1 統計期間:昭和45年~平成21年)。
この統計結果だけを見ると,離婚に際して子どもの有無は影響していないように思えます。
しかし,実際には,夫婦関係がすでに破綻しているにもかかわらず,離婚を決意できない理由として,子どもの存在を挙げる方は少なくありません。
「子どものことを考えると,(離婚せずに)父親(母親)との同居を続けるほうが良いのではないか…」
たしかに,核家族化が進み,祖父母と同居しない家庭では,両親の存在が子どもにとっては唯一の大人であり,心の拠り所としての存在意義は大きいものです。
しかし,共働き世帯数は年々増加し,平成9年度の949万世帯から平成29年度には1188万世帯に達する一方,男性雇用者と無業の妻から成る世帯は,921万世帯から641万世帯にまで減少しています(※2)。
両親のどちらかが常に在宅してしていることは,もはや“通常のこと”ではなく,親子がともに過ごす時間の質こそが重要な時代といえます。
ところが,現在でも,両親が子どもと同居しているという事実を,“子どもの幸せ”を評価する際に重視する風潮は強いようです。
同居している事実(時間の長さ)は客観的に明らかですが,その家庭内の子どもが親の愛情を感じながら,精神的に満ちた時間を過ごしているかどうか(時間の質)を客観的に判断することはできません。
子を愛し,子の幸せを案じるからこそ,客観的な指標に頼ってしまうのかもしれません。
しかし,“子どもの幸せ”は決して外部から安易に評価できるものではありません。
子どもは,両親の想像以上に,敏感に周囲の状況を察知し,両親の表情の変化や口調からその心境を読み取っています。
相談時に,同席されたお子さんの発言にはっとさせられることがあります。
限られた時間だからこそ,親子ともに心から笑い合える時間を過ごすことが必要なのだと思います。
同居を解消することにより,別居した側の親の笑顔が増え,そのことが子どもへも好影響を及ぼすという事例を目にします。
離婚を考える際には,同居という形式によって得られる社会的評価より,同居による子どもへの負担にこそ目を向けるべきなのかもしれません。
※1「厚生労働省 親権を行わなければならない子の有無別離婚件数・構成割合及び親が離婚した未成年の子の数・率の年次推移」
※2 内閣府男女共同参画局 男女共同参画白書(概要版)平成30年版)
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