婚姻費用と財産分与について、それぞれ高額の支払を相手方から受けることができた事例【離婚解決事例58】
30代の夫婦。依頼者は妻。
開業医の夫のモラハラがひどいため、幼児を連れて実家に返るかたちで別居が開始し、この段階で代理人として介入することに。
夫も直ちに弁護士を立てたが、依頼者が子どもを連れて別居したことに納得が行かず、親権も譲らない姿勢を崩さなかったため、離婚調停を申し立てることになった。
調停では、財産分与についても夫が低額の合意をしていたなどと主張したため折り合いがつかず、早々に不成立となって、離婚訴訟を提起することになった。
夫は、婚姻費用についても、依頼者が有責配偶者であるため養育費相当額しか払わないなどとの態度を変えなかったため、調停も不成立となり審判となった。
個人事業主である開業医の夫の収入評価が争点となり、家裁では月額41万円の支払を夫に命じる審判が出た。
夫の収入評価について当方の主張が認められなかったものの、依頼者は高裁に不服申立てをすることを望まなかったことから、抗告をしなかったが、夫が抗告したため、高裁の判断を仰ぐことになった。
この抗告審で当方の主張を改めて展開したところ、高裁は月額51万5000円の支払を夫に命じる審判を下した。
離婚訴訟では、財産分与が主な論点となったが、夫の主張に効果的な反論を重ね、最終的には未払の婚姻費用も含めて総額2800万円を夫が支払うことで訴訟上の和解が成立した。
コメント
このケースも婚姻費用が明暗を分けた事案です。
皮肉なことに、家裁の審判に不服を申し立てたのは夫でしたが、高裁では家裁よりも夫に不利な審判が出てしまいました。
通常の訴訟では「不利益変更禁止の原則」という制度があって、このような結果にはならないのですが、家事事件では自分しか不服申立てをしていないのに自分により不利な結果になる可能性がありますので、「とりあえずダメ元でもよいから不服申立てをする」という考えですと、思わぬしっぺ返しを受けることがありますので注意を要します。
夫の収入評価に関しては特殊な論点が含まれていましたが、専門書を引用するなどした結果、抗告審では正しく判断をしてもらえて月額50万円を超える高額な婚姻費用の審判を得ました。
この抗告審の結果に、夫は経済的なだけでなく精神的にも堪えたようで、離婚訴訟についても、当方の主張をほぼ受け容れるような内容で和解が成立しました。
財産分与では、夫の特有財産をどこまで認めるか、有価証券の評価、依頼者の寄与度などが問題になりましたが、夫の主張・立証に法的に対抗し続けた結果、あるべき財産分与が実現しました。
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