離婚訴訟の長期化-裁判官の仕切力- 2017/7/24
日本経済新聞の記事によると,昨年(2016年)に終決した離婚訴訟の第一審に要した期間の平均が12.3ヶ月で,離婚訴訟が家庭裁判所の管轄となった2004年以降でもっとも長かったそうです。(最高裁の報告書)
私自身の経験からも,判決まで行く場合は,早ければ訴訟提起から判決まで8ヶ月ほど,長ければ1年半ほど,まあ,だいたいが1年前後という感覚なので,報告書の12.3ヶ月という数字は納得です。
報告書では,「財産分与のための預金取引履歴の開示を巡って夫婦が対立したり,離婚原因についての主張の応酬が繰り返されたりする」ことが長期化の要因だと分析されています。
確かに,このような要因で長期化するというのは,私も実感しています。
しかし,このような事情があったとしても,裁判官の力量次第で無用な長期化を避けることができるということも経験上感じています。
預金取引履歴の開示を巡る争いなどは,金融機関に対する調査嘱託に関する裁判官の見解をできるだけ早い段階で示すことで争いが長引くことは避けられます。
どういうわけか,このあたりを積極的に仕切る裁判官は比較的小数派です。
離婚原因についても,当事者に任せで主張と反論を繰り返していたら,長期化するのも当然です。本来は裁判所に対する「婚姻を継続し難い事由」の有無に関する主張のはずが,主張と反論を繰り返すごとに「裁判所に対する主張」ではなく「当事者同士のけんか」の様相を帯びてきます。すなわち,裁判官に対し主張を理解してもらうという本来の目的から外れて,相手を言い負かす(相手をギャフンと言わせる)ことが目的となってしまいがちです。こうなるとエンドレスです。なんせ,当事者同士で話がつかなかったから裁判になっているのですから。
このような争いも,双方の主張が単なる夫婦ゲンカ的な内容になる一歩手前で裁判官が仕切ることによって応酬の繰り返しで泥沼化するのを防ぐことができます。
離婚訴訟こそ裁判官の仕切が重要だと感じています。
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