離婚する場合に学資保険について気をつけるべき点-その1 2016/8/30
コラム 74 離婚する場合に学資保険について気をつけるべき点-その1 2016/8/30
離婚する際,学資保険は財産分与とは無関係であると考えている人が少なくありません。
漠然と,親権を取る方がそのまま学資保険を無償で引き継げると考えている人も多いです。
しかし,学資保険は原則として財産分与の対象となります。
学資保険は,通常ですと,解約すれば解約返戻金を受け取ることができます(契約者貸付をしていれば,それが僅かな金額になることもあります)
そのため,この解約返戻金を財産と捉えて,学資保険も夫婦の財産の清算の対象に加えることになります。
夫婦がふたりで保険料を支払って形成した財産であるということですね。
たとえば,仮に解約すると100万円が戻ってくるのであれば,100万円の財産と評価することになります。
もっとも,実際に解約することはせずに,学資保険を引き継ぎたい人(仮に母とします)が,相手方(仮に父とします)にこの解約返戻金見込額の半額を渡すことによって清算することがむしろ多いです。
これを「代償金」の支払と言います。
母が父に50万円を実際に支払う,あるいは他の財産からの母の取り分を50万円減らすといった調整をすることになります。
もちろん,父が,この学資保険は子どもの財産であるなどと受けとめて,財産分与の対象財産から除外することに応じれば,母は,この代償金を支払う必要もないことになります。そのような例も実際にあります。
また,そこまで父が太っ腹ではないとしても,父が代償金の支払を受けない代わりに,その点を父の今後の養育費の支払い方で考慮するケースもあります。
たとえば私立大学に進学する予定の場合,特別費用として養育費の負担が増額されることがあり得ますが,そのようなことはしないといった取り決めをすることもあります。
母とすれば,いま現実に支払うべきものが少なくなるというのは「確かなメリット」ですので,一考の余地があり,時には自分から提案していくことも考えられます。
もうひとつの留意点は,学資保険を引き継ぐ人の名義ではない場合は,契約者の変更をしておくのが望ましいということです。
元々相手方名義になっていて,相手方がこれからも保険料を負担してくれるような場合や保険料の支払いを前払しているような場合は,保険の契約者を変更しないで済ます夫婦もいます。
ただ,これはとてもリスキーです。
名義変更をしていない以上,満期を迎えても,自ら満期金を保険会社などから受け取ることはできず,いったんは契約者である相手方が保険金を受け取ることになります。
この相手方から実際に受け取ることができるかどうかは,相手方の属性や経済状態によりますが,何らかの事情から相手方が保険金を自分の物にしてしまうリスクはゼロではないケースが多いです(また,途中で解約されてしまうリスクもゼロではありません)。
そこで,保険の契約者を変更する方がやはり安心です。保険料の負担を求められることもありますが,それでも確実に自分のものにするためには,契約名義の変更をするに越したことはありません。
なお,離婚が成立した後に契約者を変更してもらうことは時に難しい場合があります。
事前に必要書類を送付・指示するなどして,離婚調停の成立時に裁判所で既に受け取っておくのが手堅いです。
弁護士 大川 浩介
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