養育費,婚姻費用

大川先生

1. 養育費の取り決め

 離婚した夫婦間に未成年の子がいる場合,親権のない方の親はその子の養育に要する費用を負担する義務があります。
 例えば,妻側が子どもを引き取った場合は,夫側が養育費を支払う義務を負うことになります。

 養育費の額などについて合意ができた場合は,証拠となりますので,書面で取り決めるのが一般的です。
 また,後で触れますが,不払いとなったときに直ちに強制執行ができるよう公正証書の形式を取ることも考えられます。
 養育費の額などをめぐって折り合いが付かなければ,やはり調停を申し立てることになります。

 申立ての詳細は,こちらの裁判所のウェブサイトをご覧ください。
http://www.courts.go.jp/saiban/syurui_kazi/kazi_07_07/index.html

 調停でも妥協点がみつからず不成立となったときは,自動的に審判手続に移行し,裁判官(審判官)の判断を仰ぎます。

 

2.養育費の算定

 養育費の額については,東京と大阪の裁判官が共同で研究して作成した「算定表」があります。
調停や訴訟の場でもこの算定表が大変重視されています。以下のウェブサイトなどでご覧いただけます。

http://www.courts.go.jp/tokyo-f/saiban/tetuzuki/youikuhi_santei_hyou/index.html

この養育費の算定表には,子どもの数と年齢に応じて9つの表があり,双方の収入に応じて,(数万円の幅を持った)標準となる養育費月額が導き出されます。

もっとも,この算定表は,「標準的な」額を「簡易迅速」に求めるためのものにすぎず,この表で算定された数字は絶対的なものではありません。例えば,養育費を支払う側が,養育費を受け取る側の住居費を負担する場合は,もちろん,その分は既払い分として差し引くことになります(ただ,支払う側の所有不動産で住宅ローンを返済する場合には,支払う側にとっては資産形成という側面もあることから,別の考慮も必要ではないかとされています)。

また,婚姻中に生活のための借金があり,養育費を支払う側がその返済をしている場合は,この負担も考慮されることになります。そのほかにも,私立学校に通う場合の学費の負担など,養育費を取り決めるにあたって難しい問題のあるケースが少なくありません。
話し合いや調停が難航する場合は,法的な見地から考え直すために弁護士に相談することも有用です。

 

3.養育費の(増)減額

 当事者間で協議して,あるいは調停や審判で養育費の額が定めた場合でも,その後,事情に変更を生じたときは,養育費の増額や減額を請求することができます。

 当事者間で話し合って合意に至れば問題はないのですが,折り合いが付かないときは,養育費の(増)減額を求める調停を申し立てることができ,調停がまとまらないときは審判を求めることもできます。

 

4.一方が再婚した場合,養育費はどうなるのか

 養育費を取り決めて離婚した後,夫婦のいずれか(あるいは双方)が再婚するケースも多々あります。まず,養育費を受け取る側(ここでは母と仮定します)が再婚した場合,当然に,父の養育費の支払義務が消滅するものと誤解されている方もいらっしゃいますが,そんなことはありません。

 ただ,再婚相手の男性がその子と養子縁組をすると,その男性にも扶養義務が発生するため,元々の父の支払うべき養育費が減額される可能性が出てきます。話し合いでまとまらなければ,やはり調停を申し立てることになります。

他方,養育費を支払う側(ここでは父と仮定します)が再婚した場合,再婚相手の女性との間の子どもが生まれたときは,父はその子の扶養義務も負う結果,離婚した妻との間の子どものために支払う養育費が減額される可能性が出てきます。

このように,一方が再婚しただけでは,本来,養育費への影響はないのですが,再婚を契機にして,養育費の減額が問題となりうることになります。

減額を求める場合あるいは減額を求められた場合に,法的に減額が認められるか,どの程度認められるかについては複雑な計算を要する場合もありますので,不安なときは弁護士に相談することをお勧めします。

 

5.養育費の不払い

 残念ながら,いったん取り決めた養育費が支払われなくなることがよくあります。収入がなくなるなどの理由で「支払えなくなる」ケースもありますが,支払えるのに「支払わない」ケースも少なくありません。

 調停や審判での養育費の取り決めを守らせる方法として,家庭裁判所に「履行勧告」や「履行命令」を申し出る制度があります。家庭裁判所に相手方が取決めを守るよう勧告してもらったり,命令を発してもらったりするのですが,相手方がこれらに応じない場合でも支払を強制できません(ただ,手数料は不要で,申し出も簡単です)。

そこで,多くの場合,強制執行の手続を取ることを検討すべきことになります。調停や審判で養育費が定められた場合は,直ちに強制執行ができます。

しかし,当事者間での協議で養育費の取り決めをした場合は,原則として,訴訟を提起するなどして判決を得た上でなければ強制執行ができません。ただし,この場合でも,公正証書で養育費を定めたときは,やはり直ちに強制執行ができます。

強制執行としては,相手方の不動産や預金,給与などの財産を差し押さえて,そこから満足を得る「直接強制」という手続を取るのが一般的です。ただ,この手続が功を奏するためには,不動産なら所在を,預金なら金融機関を,給与なら勤務先を,それぞれ特定する必要があります。

なお,強制執行の方法として,「間接強制」というものもあります。これは,一定の期間内に支払わなければ,別途,間接強制金を課すという警告(決定)を発することで,心理的圧迫を加えて支払を促すものです。

 

6.養育費の不払いのリスクの回避

 相手方が公務員や大企業の勤務であれば,相手方としても支払を怠ると給与を差し押えられてしまうことから,養育費の任意の支払が続くことを期待できます。

 しかし,相手方が職を転々としたり不安定な自営業者であったりすると,公正証書や調停調書があるといっても,それは文字どおり「絵に描いた餅」にすぎなくなるおそれがあります。

このような場合,養育費の不払いのリスクを回避することは簡単ではありません。取り決めをする際に相手方の親族に保証人になってもらうよう要求することも考えられますが,応じてもらえないのが通常です。

もし離婚する時点で相手方にまとまった財産があるのであれば,養育費を一括して前払いしてもらうことも検討に値します。この場合,相当な減額を余儀なくされることも考えられますが,不払いのリスクを確実に回避できるというメリットは大きいと思われます。相手方には一括払いの義務はないので,相手方の同意を得る必要があります。

 

7.婚姻費用

 離婚するまでの間は,夫婦は婚姻費用(生活費)を分担する義務を負います。したがって,例えば妻が子どもを連れて家を出て別居する場合は,妻は夫に対し,自分たちの生活費の支払を求めることができます。

 婚姻費用の分担について話し合いがまとまらない場合には,家庭裁判所に婚姻費用の分担を求める調停を申し立てることができます。調停が不成立になった場合に自動的に審判手続へと移行する点は,養育費と同じです。

この婚姻費用についても,養育費と同様に,東京と大阪の裁判官が共同で研究して作成した「算定表」があり,やはり,調停や訴訟の場ではこの算定表が重視されています。婚姻費用として認められる金額は,妻の生活費も含まれるため,養育費額よりも高額になります。

よくある相談例

■養育費の「算定表」があると聞きましたが,どのようなものですか? → 2
■一方が再婚したら,養育費はどうなるのですか? → 4
■養育費が支払われなくなりました。支払ってもらうにはどうすればよいですか?→ 56
■現在別居中ですが,離婚が成立するまでの間の生活費は請求できますか?
また,請求できる額は幾らぐらいでしょうか? 
→ 7

解決事例

夫の不貞行為の動かぬ証拠をつかんで,算定表を遥かに上回る婚姻費用を獲得した事例

 

高額の婚姻費用の支払の継続を回避するために速やかに調停離婚を成立させた事例

養育費・婚姻費用に関する弁護士費用

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